最近、いろいろな分野で格差が広がり、健全な市民生活が損なわれようとしている。4月2日の夜、NHKで放映された新番組「日本の、これから」の第1回、「どう思いますか格差社会」でも、所得格差などをいろいろな角度から討論形式で議論していたが、残念ながら具体的な解決策に至らなかった。
30年前にアメリカで生まれたファストフード産業は、またたく間に成長し世界中に広まっている。M社は資本主義の典型的な手法のひとつである徹底的な合理化で、安いファストフードを消費者に提供することで人気を得た。引き続き、原料であるポテトや牛を農家や牧場から専属契約方式で安く買い上げ、更に加工工場を専有化して合理化することにより、コストダウンを図った。また、販売店のチェーン化を進めて巨大な企業になり、今や国家の動向まで左右する力を持つに至った。
その間、中小の農家や工場はつぶれ、労働者の賃金も低下し、夫の稼ぎだけでは生活が苦しくなったこともあり、既婚女性もパートやアルバイトで生活費を補填する破目になった。いままで家庭で食事を作っていた主婦も、安くて手軽なファストフードに走り、ファストフード店がますます儲かるというスパイラル現象が起こった。つまり、所得格差が大きくなったことにより、低所得者はファストフードに走り、ファストフード産業はますます栄えるというスパイラルのパターンである。
これだけなら、他の産業でも大なり小なり起こっている現象で、資本主義の世界では容認されている。ところが、ハンバーガーによる食中毒はアメリカ国内でも大きな問題になっており、その対策に苦慮しているとのことである。そんなさなか、BSE問題が発生した。不幸にしてBSEの発生国となったイギリスを始めとして主たるヨーロッパ各国は科学的根拠に基づいて多少の差はあるものの、国民の納得できる対策を講じた。日本はBSEをやや甘く見ていたために、国内で発生するや国を挙げてのてんやわんやになったが、その後、世界で最も安全といわれる対策を講じ、現在に至っている。
それではアメリカはどうしているのか? カナダから輸入した牛が1頭発病したが、それ以外は問題ないとして、ヨーロッパに近い対策を農務省が提示しているものの、それが確実に守られている証拠は得られていない。理由は簡単で、多くの牧場では他国で実施している出生管理すらできないし、大規模な食肉加工工場では危険部位の除去作業を行う工程の管理が十分でない工場が多いと言われている。
アメリカでも十分な対策を講じ、必要な管理のできる牧場や加工工場もあるが、なぜか農務省が許可しないと言われている。推測するに、それを認めれば、大規模牧場や加工工場がそれに従わざるを得なくなり、牧場経営のシステムを根本から変える必要が生じるため、政府にプレッシャーをかけ、阻止しているのであろう。
アメリカは結果オーライの国である。実際にBSEに感染した牛がもっと出てこない限り、動かないであろう。死んでいく牛の検査も十分に行っていないようだから、この件ではまともな交渉はできないと考えたほうが良い。危険を冒してまで輸入する必要はないのだから、科学的見地で納得できる対策とそれを実施している証拠を示してもらわない限り、妥協の余地はない。
考えてみれば皮肉な話で、資本主義を進めて国家を発展させようと努力しているのに、どこで歯車が狂ったのか、少なからぬ国民が不幸になり、科学的な問題提起にも正しいアクションが取れず、アメリカだけが裸の王様になりかかっている。負のスパイラルほど恐ろしいものはない。なお、上に述べた内容に関しては、次の2冊の本に詳しく書かれている。
1.「ファストフードが世界を食いつくす(FAST FOOD NATION)」
エリック・シュローサー著、楡井浩一訳、草思社、 1,600円
2.「牛肉と政治 不安の構図」中村靖彦、文春新書437、 700円


私は日本の文化に与えた悪影響も大きかったと思っています。
国民を守るための政府に殺される国民とは一体何なのか、考えさせられる所が大きいです。
この問題は根が深く、窓口も広いので相当構えてかからないと胡散霧消の形で過去形になってしまう。幸いプログで記録が残されるから、そして天下に情報が伝えられるから、なんとかその点に救いが見いだされる。
知らないというのは、恐ろしいことであり、不幸なこと。生活の中で最も大切な「食の問題」であるこの問題を新聞社はもっと論説すべきだ。IT格差のある人々にも配慮して情報伝達したい問題である。
私は牛肉は食べないことにした。生産地が明らかな和牛は、たまに頂く。